JIS開校式挨拶

 2024年9月7日・9日に行われたJIS(Japan International School)サマルカンド校およびタシケント校での私の挨拶文です。この学校への思いと、私が考える日本型教育について述べました。

 

皆さんこんにちは。本日この良き日に、こうして、日本国際学校(JIS)がめでたく開校できたこと、そして皆様にここで出会えたこと、とても嬉しく思います。私はただいま紹介にあずかりました、この学校で、エグゼクティブアドバイザーの任を担っている下町と申します。

 

実は今、日本ではウズベキスタンが静かなブームです。毎週金曜朝、テレビでウズベキスタン特集をやっていて、それを見た私の友人が、ウズベキスタンは素晴らしい国ですねと言ってきます。私はそのように言われると、自分が褒められたように嬉しい気持ちになります。

 

私は、この静かなブームが、今後大きな波になっていくだろうと確信しています。物事がブレイクするためには、その前の静かなブームの時期が大切です。そして、その灯をともした人々が、後の大きなイノベーション、変革を生み出していく中心人物になることと思います。

 

そのように考えると、タシケント校のエンドール校長、サマルカンド校のフルシド校長、本校の投資家であるエルムロットさんが先見の明を持ち、ウズベキスタンで初めて日本型教育を導入した、このJIS「日本国際学校」は、まさにウズベキスタンと日本の絆を強め、両国の未来を明るいものにしていく礎になるものだと思います。

 

新しくスタートするこの学校の「今」とは、これまでこの学校経営に関わってきたすべての人たちの過去の苦労が咲いている「今」です。そして、また「今」とは、これからのワクワクする未来の蕾である子どもたちでいっぱいの「今」でもあります。

 

私は、マネジメント・統括してきたKEIアドバンスの坂田拡光、子どもたちにサイエンスショーなどを通して科学の面白さを伝える活動をサポートしてきた岩手大学教授の高木浩一、小学校低学年の探究型の授業モデルを中心的に提示してきた和光大学教授の加川博之、そして片平エンジニアリングのラスルとともに、こちらの学校設立に、カリキュラム開発の面から協力してきました。

 

私は、数学の教科書の日本型サブテキストの作成、教材や教具の提供とともに、職員研修、子どもたちへの授業も何度も行ってきました。その中で、ウズベキスタンの子どもたちの目の輝き、先生方の積極的な姿勢に心打たれました。ウズベキスタンへの日本型教育の提供は、ウズベキスタンへの支援であるとともに、同時に、日本の教育課題について気づかせてくれるヒントに満ちています。

 

さて皆さん、「日本型教育」とは何でしょう。みんなで着物を着ることでしょうか、お昼にお寿司やラーメンを食べることでしょうか。まさかですよね。では、放課後に皆が一斉に掃除をすること、でしょうか。私はそれも違うと思います。日本型教育とは、日本でやっている事の、その形式・様式を単に真似ることではありません。大切なのはその行動の裏にある精神です。

 

日本の学校で、全体で掃除をしたり、道徳を学ぶのは、知識や技能を身につけるより前に、子どもたちの「情緒(Jocho)」を育むことが必要と考えているからです。ここでいう「Jocho」とは、物事に感動したり、共感する心、不思議なもの、未知のもの、美しいものに心が動き、そこからもっと先を知りたいという好奇心や探究心が生まれていくことです。「Jocho」が育まれることで、自律的に行動することや、他者への優しさを身につけることにもつながります。これが私の考える日本型教育のスピリッツです。

 

しかもこれは、学力の向上と強い関係があります。なぜなら、「Jocho」が育つことによって、気づきの感度が高まり、それは本質をつかむ力になり、自ら学ぶことへの原動力にもなるからです。また、優しさを身につけた人間は、相手を高めることで自分の能力が磨かれることを知っています。そして、世の中の困難に立ち向かう勇気や、自分に打ち勝つ力にもなるのです。

 

私は校内にある素晴らしい壁の絵を見て、まさにこういう環境が子どもたちの「Jocho」を育てると確信しました。

 

その壁絵の一つに、アインシュタインの言葉がありました。

 

Education is not the learning of fact but the training on the mind to think.

 

これこそが、私の考える日本型教育と合致する言葉です。これからの社会では、何かをいっぱい暗記しているとか、計算する速度が人より速いなんて、意味がありません。そうではなく、未知の物から、新しい宝を見つけること。ものに集中し、粘り強く考え抜くこと。一方で、仲間と共同して新しい価値を創り出すこと。そういった「考える心(mind to think)」を生み出すのが「Jocho」の力であり、日本型教育の真髄だと思っています。

 

先日タシケント校の何人かの先生方と、この学校をどんな学校にしたいかというテーマでワークショップを行いました。ある先生は「子どもたちが、明日も学校に来たいというワクワクした気持ちになる学校にしたい」といいました。またある先生は「生徒も先生もともに幸せを分かち合い、広げあって行ける学校にしたい」そして、「そのためには私は全力で力を注ぎたい」と力強くお話されました。

 

私は、これらの言葉にとても勇気づけられました。まさに、「Jocho」を育て「ウェルビーイング」な教育を行う日本型授業のスピリッツを、先生方はすでに実践しようとしている、と感動しました。

 

私たち日本側のスタッフは、これからもこちらの学校で、人材の交流、特に、大学との接続の支援を模索していきたいと思います。そして、ウズベキスタンと日本の良好な関係を更に加速させていければと思います。

 

皆さん、ともに踏み出しましょう。まだ誰もが見たことのない道かもしれません。恐れるなかれ、踏み出せばそこに道はできます。そして、次の世代の人たちがそれを追いかけて、更に新たな太い道が生み出されていくでしょう。一緒に未来を創っていきましょう。本日はおめでとうございます。

 

 

JIS副校長兼エグゼクティブアドバイザー 下町壽男

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ウズベク語版(Uzbek version)PDF
Opening Ceremony Greetings
Ochilish marosimi tabrik nutqi (1).pdf
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Opening Ceremony (Samarkand School)サマルカンド校開校式 

Opening Ceremony (Toshkent School)タシケント校開校式