私のあんはっぴい・ふしあわせ物語３

■「ふしあわせ」は「節あわせ」

「ふしあわせ」つまり「節合わせ」とは、一緒に歌ったり合奏したりという意味を表す言葉でもありますね。オーケストラを例にあげましょう。オーケストラでは、個々のインストルメンタリストの持ち味を十分に発揮しつつ、それぞれが全体に溶け込んで楽曲を作り上げます。それは、異なる楽器の音質や特性を歓迎し、時にソロを交換し、和音を奏でながら、美しいシンフォニーを生み出していく営みです。このことは、多様な他者の存在を排除するのではなく、喜びあい、尊重しあい、相手の言葉に共感しながら、幸せなコミュニケーションを築くこと（幸せなコミュニケーションに気づくこと）と例えられるのではないかと思います。

■コールアンドレスポンス

でもですね。オーケストラなんて大げさなことを取り上げなくても、もっと身近なところに「節合わせ」はあるのです。それはセッション、つまり音楽を媒介にした「掛け合い」です。コールアンドレスポンスと言われるものがあります。一人の歌い手が問いかけるワンフレーズに、もう一人の歌い手が呼応します。あるいは、歌い手の呼びかけにコーラスや、時には聴衆が応じます。もちろんコールアンドレスポンスは歌だけではなく楽器同士でも繰り広げられます。ジャズのジャムセッションでの互いのアドリブの交換や、曲の締めくくりに行われるフォーバースチェイスといわれる4小節ごとの掛け合いなど、まさに楽器による「対話」のように思います。そういった「掛け合い」によって、グルーヴ感、スウィング感、つまり幸せな高揚感が生まれていくのですね。まさにこれは、音楽による「しあわせなふし（節）あわせ」といっていいのではないでしょうか。

音楽によるコミュニケーションというと、みんなで一緒に歌うということが思い浮かびます。でもコールアンドレスポンスはそこにもう一歩、主体性、独創性のようなものが加わったカタチといえるかもしれませんね。

■「セロ弾きのゴーシュ」とセッションの効果

ところで、皆さんは宮澤賢治の「セロ弾きのゴーシュ」の話をご存じですか。簡単にあらすじをまとめるとこんなカンジです。

ゴーシュは、町の金星音楽団でセロを担当していますが、彼はとても演奏が下手で、楽長からしこたま怒られています。数日後に行われる町の音楽会で第六交響曲を演奏するためにゴーシュは夜遅くまで自宅で一人で練習しています。するとそこに毎日いろいろな動物がやってきてゴーシュに絡んでくるのです。最初は三毛猫、翌日はかっこう、次の日はたぬきの子、そして最後の日は野ねずみの親子です。ゴーシュはその動物たちに苛立ち、荒々しい演奏をして追い出してしまうのです。しかし、ゴーシュは、そんな動物たちとの関りの中で成長していき、演奏会では素晴らしい演奏を行い、アンコールで独奏し好評を博するのです。ゴーシュは、動物たちとの関りが、自分の演奏の足りなさや、音楽の持つコミュニケーションの力に気づかせてくれたとしみじみと思うのです。

「セロ弾きのゴーシュ」は、音楽とはメロディ、リズム、ハーモニーに留まらず、アンサンブルから生まれるコミュニケーション力や癒しの効果など、音楽の持つ本質的な優しさや強さのようなものを私たちに教えてくれているように思います。そしてそれは、音楽だけではなく、様々な他者との対話などの交わりを通じて心の成長が生まれていくことなのではないかと、そんなことを私は思いました。

■起承転結「ウィスキーがお好きでしょ♪」ワーク

では最後に、音楽療法士の三井さんと一緒に考えた「ウィスキーがお好きでしょ」という曲を題材にしたコールアンドレスポンスを紹介したいと思います。

「ウィスキーがお好きでしょ／もう少ししゃべりましょ／ありふれた話でしょ／それでいいの今は」

この4フレーズを「起承転結」のクエスチョン＆アンサー型のコールアンドレスポンスにするのです。

例えば今Aさんが「どら焼き」にハマっていて毎日食べるのが楽しいけれど、カロリー過多で太るのが心配だ、と悩んでいるとします。そこでまずＢさんがＡさんに問いかけます。

起Ｂ：「どら焼きが好きなのね♪」

さらに、質問を重ねて対話を促します

承Ｂ：「もう少し聞かせてね♪」

ここで、Ａさんに転じます。Ａさんは例えば次のように素直な気持ちを吐露します。

転Ａ：「でもカロリーが心配よ」

最後にＢが応えます。

結Ｂ：「それでいいの今は」

この部分は、Bだけでなく全員で唱和してもいいですね。つまり、あなたのありのままを受け入れること、今の自分の選択に不安を持っているかもしれないけれど、きっとそれは幸せな方向に回収されるから安心してねと言うわけですね。こんなカンジで、ウィスキーのところと、3フレーズ目の転の部分を様々入れ替えて歌っていくとハッピーな気分になりますよ～。

以下にサンプル動画を紹介します。

いよいよ明日、13:00から齋藤みずほさん、三井和子さんとともに、「ウェルビーイングカフェ～あなたと〇〇と幸せと～」というワークショップを行います。「ウィスキー・・」の「節合わせ」のワークもやりますよ。皆さんで「節あわせ」をして、「不幸せ」を追い出しましょう！

ミーティングID: 832 6408 8205　パスコード: 357119