私が若かりし頃、音列について研究したことがありました。旧ホームページにそのことを記しましたが、こちらにも改めてまとめてみたいと思います。今回は等差数列に因んだ音階の話です。MIDIファイルもありますのでどうぞ気軽にお楽しみください。
まず、下図のように、音階C,C#,D,D#,E,F,F#,G,G#,A,A#,B に①②③・・・⑫と番号を付けます。
次に、12を法とした初項1公差dの等差数列を考えます。等差数列は次の表のように12種類が考えられます。
公差 | 数 列 | 周期 |
1 | 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12 | 12 |
2 | 1,3,5,7,9,11 | 6 |
3 | 1,4,7,10 | 4 |
4 | 1,5,9 | 3 |
5 | 1,6,11,4,9,2,7,12,5,10,3,8 | 12 |
6 | 1,7 | 2 |
7 | 1,8,3,10,5,12,7,2,9,4,11,6 | 12 |
8 | 1,9,5 | 3 |
9 | 1,10,7,4 | 4 |
10 | 1,11,9,7,5,3 | 6 |
11 | 1,12,11,10,9,8,7,6,5,4,3,2 | 12 |
12 | 1 | 1 |
左の数列は1周期分です。つまり、この数列がサイクリックに繰り返されるということです。
周期は、12を、公差と12の最大公約数で割った数で決定されます。例えば、公差が10の場合は、10と12の最大公約数は2なので、12÷2=6から周期は6になりますね。12音全部の音が現れるのは、12と互いに素になる数を考えればいいので、公差が1,5,7,11の4通りであることがわかります。
一応オイラーの式で考えると、12×(1-1/2)(1-1/3)=4 という計算により互いに素である数の個数が求まりますね。
では数列のスケールを聴いてみましょう。12音だと面白味がないので36音(3オクターブ)に設定して作ってみました。
また、公差が1~5と公差が11~7は対称なので、公差1~5までの曲を調べれば十分ですね(公差6と12はつまらないのでカット)。
■ 公差2の場合
■ 公差3の場合
■ 公差4の場合
■ 公差5の場合
公差5は12と互いに互に素なので、12音全部が1度ずつ現れる。黒鍵と白鍵が2つに分離してでてくるところが面白い。実はこれは完全5度のサイクルによる音階の構成法である。確かマイルスデイビスのラウンドミッドナイトのコーダでこのフレーズのようなカンジのものが出てきたと思う。
【発展】階差数列が等差数列の音階
■ 第1階差数列が初項1公差1の等差数列になるような数列の音列
第1階差が初項1公差1の等差数列を12を法にして書き上げると、{1,2,4,7,11,4,10,5,1,10,8,7,7,8,10,1,5,10,4,11,7,4,2,1}というように、周期24の数列になります。しかも左右対称形なので楽曲としても面白そうです。回文的な曲はバッハの「音楽の贈り物」に出てくる「蟹のカノン」とか、モーツァルトが作ったといわれる(実際はモーツァルト作かどうかは怪しい)「回文的逆行可能なカノン」などが有名ですね。ではこの数列を音階で表して聴いてみましょう。
■ 第1階差数列が初項1公差2の等差数列になるような数列の音列
第1階差が公差2の等差数列の場合は、{1,2,5,10,5,2,1}となります。これは6音で1周期です。この音階はへんなアルペジオのようなメロディーです。
■ 第1階差数列が初項1公差3の等差数列になるような数列の音列
第1階差が公差2の等差数列は {1,2,6,1,11,12,4,11,9,10,2,9,7,8,12,7,5,6,10,5,3,4,8,3} となります。周期は24です。こちらの楽譜とMIDIファイルは以下の通りです。
■ 階差数列スペシャル
オマケ フィボナッチ数列の音階
では最後におまけとしてフィボナッチ数列の音階も考えてみましょう。フィボナッチ数列を12を法として表すと
{1,1,2,3,5,8,1,9,10,7,5,12,5,5,10,3,1,4,5,9,2,11,1,12,1}という24の周期を持つ数列になることがわかります。これを、先ほどの手法で曲にしてみます。前奏8小節と、最後8小節に上で述べた階差数列が公差2の等差数列になるフレーズ(奇妙なアルペジオ)を挟んで曲らしくしました。無調性なのですが、最後は一応 key in Aで完結します。
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